2009年09月29日

高速道路の無料化メリット・デメリットについての考察(その7)



高速道路(以下高速)の無料化が議論されています。国民は意外と冷静で、この9月におこなわれた朝日、毎日の両新聞社の世論調査では「高速無料化公約を履行しなければならないか」という質問に対し、回答者の約3/2が反対とのことです。

そこで高速の無料化のメリットとデメリットでよく言われていることを下記に記しましたが、例えば「CO2の増大」について言えば「渋滞していた一般道が空いてCO2は減る」という意見と「高速の渋滞が一層激しくなりCO2が増える」という意見に分かれます。

同様に「マイカーが増え、高速バス会社がつぶれる」に対して「高速バス料金が下がり利用者が増える」というようにメリットデメリットが表裏一体で、どう想定するかによって180度変わってきます。それをいいことに賛成派も反対派も自分達に都合のいいところだけを取り上げて主張をしています。

表裏一体とは別にメリットだけ、デメリットだけというものもあります。例えば「内需拡大に貢献する」「流通コストが安くなる」(メリット)とか「公共交通やカーフェリーの経営を圧迫する」「料金徴収員の仕事がなくなる」(デメリット)などがあります。

【メリット】よいこと
・多くの高速利用者が喜ぶ
・無駄な新しい高速建設に歯止めがかかる
・高速と併走する一般道の渋滞が緩和され、事故が減り、環境がよくなる
・高速と併走する新たな一般道路の建設をしなくて済む
・観光地が潤う
・サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)、インターチェンジ(IC)近辺の店が潤う
・ガソリンが売れる(ガソリン業者が潤い、ガソリン税が増収)
・車が売れる(車関連産業が潤い、自動車関連税収増)
・レンタカーの人気が出る(レンタカー会社、ガソリン業者が潤う)
・カー用品が売れる(タイヤ、カーナビ、旅行グッズが潤う)
・遠出しやすくなる(外食、観光、宿泊業界が潤う)
・物流コストが下がる(物価が下がり運送業者が潤う)
・ETCなど道路行政の政治的関連団体や天下りをなくせる
・料金所が必要なければ出入り口を簡単に増やせる

【デメリット】よくないこと
・高速が混雑する
・一般道路の整備が進まない
・高速と併走する一般道路の車が減って店がなりたたない
・走る車が増えるとその分環境は悪化する
・長距離バス、カーフェリーの経営を圧迫する
・利用者負担ではなく国民全体の税金が使われる
・増税につながる
・料金徴収員の仕事がなくなる
・高速のない地方(住民)にはメリットがない
・新たな高速を造る財源がない
・地方と都会の格差が広がる
・重大な交通事故が増える
・宅配便の到着が遅れる
・ETCを導入した費用が無駄になる

私はどちらかと言えば30年前から無料化(一部無料化)推進派なので一方的になりますが、デメリットについての反論を書きます。

・高速が混雑する
→現在は土日祝日だけ1000円なので集中しますが、その制限をなくせば利用者は分散するでしょう。それよりも無料になれば高速の乗り降りがしやすくなり、混雑してれば下道へ降りてちょっと休憩とか、一般道を走ろうとなりますので、今より混むということは考えられません。

・高速と併走する一般道路の整備が進まない
→必要な道路は造るでしょう。また今まで一般道を走っていた一部が高速へ流れるので、混雑が減り、新たな道路需要は減り、道路の傷みも少なくなるでしょう。

・高速と併走する一般道路の車が減って店がなりたたなくなる
→何事も努力せずに客を呼べると思っていたら、それは商売として甘いのではないでしょうか。高速が乗り降り自由になれば、気軽に降りることができますので、寄りたいと思うような名物や人気店などがあれば、客は呼べます。地方のアウトレットモールや農産物直販所など、この不況下において盛況なところはいくらでもあります。

・走る車が増えるとその分環境は悪化する
→走る台数が増えるとそれだけ多くのCO2を出すことは間違いありませんが、一般道が渋滞することと比べるとどっちもどっちという感じがします。高速が流れていれば信号ごとに停止・発進する一般道を走るより燃料消費効率はずっといいはずで、逆に環境に優しいという意見すらあります。

・長距離バス、カーフェリーの経営を圧迫する
→ある民間の研究所の意見なのですが「高速無料化による交通機関の経営悪化問題についてはモーダルシフト(トラックによる輸送から鉄道・船舶の輸送へのシフト)を推進していくことで、新たな収益源を生み出すというのが1つのアイディアである。この場合事業転換のための助成や、利用者へのコスト面での助成が少なくとも当初は必要となる」とあります。
助成というところに旧来の考え方を引きずっていて、多少引っかかりますが、様々なアイデアで生き残ることは可能だと思います。もっともどの産業でも振興と衰退を繰り返しています。「橋を造れば渡しの船が衰退し」「電車が通ればバス便がなくなり」「トンネルを掘れば峠の茶屋はつぶれる」のです。
高速が無料になることと、経営努力をしない長距離バス会社やフェリー会社が傾くその比較において、国民が得られる恩恵の差が違いすぎます。

・利用者負担ではなく国民全体の税金が使われる
→高速の無料化により、物流コストが下がり、物価を下げるメリットがあります。それに自動車を保有し使う人は既に多額の税金を支払っています。無駄遣いがなければ維持管理費用はそれらの税金でかなりまかなえます。
また利用者負担が原則と言ってしまったら、高速よりずっと利用者の少ない空港建設や維持に税金が湯水のように使われているほうが問題です。道路や公園、空港、港湾のような社会インフラは、利用しないから払わないという理屈は通用しません。ただ狭い日本に既に85もの空港があり、さらにまだ造ろうとしている政治家達の無駄遣いにはあきれ果てますが。

・増税につながる
→元々税金は道路など国のインフラ整備や福祉、教育、国家防衛等のために徴収されています。現状は一部の政治家や省庁が独占的に支配していますが、その仕組みを壊し無駄遣いをなくせば、当面は増税の必要はありません。
あとメーカー支援のエコカー減税はやめるべきです。今、増税を必要としているのは、道路とは桁違いの金が必要な将来の年金問題なのです。

・料金徴収員の仕事がなくなる
→確かに大きな問題です。もし全線が完全無料となれば全国で1万名以上いるというパートの徴収員の方が失業します。あと旧道路公団(現在は3地域の株式会社)の約1万名の社員のうち何割かは不要になるでしょう。
しかしすでに都市部を中心にETCが相当普及し、ここ数年で徴収員は相当数減っていますので、無料化のせいでいきなり減るというわけではないはずです。
それにすでに方向性は決まっているので、今から準備をすれば、ある日突然リストラされたり、会社が倒産して路頭に迷ってしまう他の民間企業と比べると、たっぷり準備する余裕があるのではないでしょうか。SAやPA、道路保守、清掃など高速関係で優先的に雇用を確保するなど移行措置はいくらでもあります。

・新たな高速を造る財源がない
→予算がなければ造らない。なにも高速にしなくとも一般国道を拡張整備すれば十分という地域も多いでしょう。今後人口が減少し、ドライバー数も減少していく中で、どうしても高速でなければダメというところはそう多くはないでしょう。
もちろん道路財源がないわけではないので、今までのように政治家の利権絡みで決まるのではなく、必要性を厳しく調査し、決定されていくのだと思います。私はどちらかというと、全国どこも同じ景色の味気ない高速より、眺めも良く気持ちよく走れ、よく整備された一般国道のほうが、また役人の利権の臭いがプンプンする高くて不味くてサービスが悪い高速のSAより、新鮮な農産物や海産物が安く売られていて、足湯や公園など地域の特徴が出ている道の駅のほうがずっと好きなんですけど。

・地方と都会の格差が広がる
→反対派は「無料になれば若い奴らはみんな都会にいっちゃうじゃないか」と言いますが、都会に住む人が高速無料化で毎週末を地方で過ごすという生き方もあるはずです。
都会ではレンタル農地はバカ高で、しかも順番待ちですが、地方で農地を借りて自給自足の真似事をしたいという人は、団塊の世代を中心に多くいます。
地方はこれから激減する貧乏な若者達を引き留めるより、ますます増えるお金持ちの中高年者を集めるという戦略に切り替えるべきです。そのような裕福で健康な中高年者が集まれば様々な産業(体験農業、宿泊、飲食、別荘、ゴルフ、陶芸、医療、介護など)が活性化していくはずです。

・重大な交通事故が増える
→市街地道路での飛び出しや出会い頭の事故と比べると、高速の場合、事故件数自体は少ないですが、速度が出てるため死亡事故や重大事故につながりやすいのは事実です。
これはドライバーのマナー向上、車の安全性能向上、インフラの整備(急カーブや渋滞頻発箇所を減らすとか)などを地道にやっていくしかありません。
前を走る車を自動追尾してくれる装置や走行車線から外れないように自動運転してくれる装置などが開発されていますが、本格的な普及にはまだ相当時間がかかります。一般道でも同じですが、せめて飲酒運転や過労運転など重大事故につながりやすいドライバーや、積載オーバーのダンプなどの摘発、排除を厳しくやってもらいたいものです。

・宅配便の到着が遅れる
→これは今よりも渋滞するということを前提にしています。しかし利用日や時間が分散されれば、今以上に渋滞することはないと思われます。
金曜日の深夜11時過ぎのSAやPAはどこも渋滞していますが、これは夜12時を過ぎて(土曜日になって)から次のICで出ると1000円ですから、集中することで起きるのです。
また現在の物流は陸送が一番安く便利なのでトラック輸送がメインとなっていますが、もし翌日配達ができないぐらい深夜の高速が混雑するならば、鉄道による貨物輸送や船による輸送などが広がるのではないでしょうか。それによって輸送コストが上がるのはスピードの対価なので仕方がありません。

・ETCを導入した費用が無駄になる
→まだ当面は完全無料化にはなりませんので、無駄にはなりませんが、高速は都市部も地方も一本でつながっていますので、例え地方のエリアだけが完全無料になったとしても、都市部を通過したり、都市部で出入りするときにはETCが必要になるはずです。
なので、ずっと地方の無料区間だけしか乗り降りしませんという人には、将来ETCが無駄になってしまうかも知れませんが、多くの人はETCが不要にはならないと思われます(私の想像)。なお地方の高速無料化で余ったETCのゲート設備は、有料駐車場や地方の有料観光道路(○○スカイラインとか)などに設置してくれるとユーザーにとっては便利で有効利用ができますね。

最後に、私の高速無料化私案ですが、

・都市部の高速(首都、阪神、名古屋の各高速含む)は距離に応じた有料課金
・地方部は無料
・バスや貨物も同様
・PA、SA、IC付近の商業施設拡充(宿泊施設、温泉、ショッピングセンター、アウトレット、カーメンテナンス、自動車販売など)により道路保守費を捻出
・地方部の高速出入り口増設(地方活性化と一般道のバイパス機能)
・高速の新規着工は渋滞緩和の目的に限る
・設備維持管理の財源不足分は自動車税、自動車取得税、自動車重量税、ガソリン税から
・東・中・西の各日本高速道路(株)(旧道路公団)の構造改革によるスリム化
・旧道路公団からのファミリー企業や特殊法人の整理と排除

さてどうでしょうか?



posted by makan at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 考察シリーズ
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