2011年05月18日

自動車部品の革新についての考察(考察シリーズ21)



自動車の装備では、日本初や世界初と言われる新しい技術や機能が取り入れられることがしばしばあります。そのごく一部ですが、自分が1980年代以降、実際に使って体験したものについて、その後どのように進化または衰退していったのかを考察してみたいと思います。

1.ボディ複合素材
1983年に発売されたホンダのCR-Xは、日本で初めて試験的にABS樹脂とポリカーボネートをベースとした複合材をフロントフェンダーとドア外装板等に、ポリプロピレンをベースとした複合材を前後バンパーが取り入れられました。これらの素材は、ボディの軽量化にも貢献し、さらに軽い衝撃を受けても復元する能力がありますので、今後多くの車種に取り入れられるのではと期待されました。

しかしこれら複合材は一枚の鉄板で製造するのとは違い、製造や組み立て、塗装などのコスト増につながり、また塗装においては鉄板と複合材で材質の違いから塗装工程も違い、まったく同色にするのは難しく、さらに経年変化により部分的に色やつやが違ってくるなど、量産メーカーとしてはデメリットが大きかったと言えます。

現在はこういった複合材でボディを作ることは、レーシングカーなど一部の特殊車両ではあるものの、一般量産車ではほとんど見られません。量産車の軽量化という意味では、ボディの一部にアルミニウムを使うケースが多く、これは耐久性、加工や塗装のしやすさなどからきているものと思われます。

ただし今後、省燃費の観点からすれば、ボディの軽量化やリサイクル性、それとコストダウンは至上命題でもあり、素材の研究を含め、製造コストや塗料、耐久性などの問題がクリアされたならば、再び見直されることが十分に考えられます。

進化したことと言えば、70年代まではバンパーと言えば一般的にメッキ処理をした鉄と、その保護用ゴムで作られていましたが、80年代以降はこれらの複合素材でバンパーが作られるのが一般化しました。それによりボディと同色に塗られカラフルなものとなり、バンパーの軽量化にも貢献しました。また軽い接触でメッキが剥がれ落ちてしまうことや錆が浮くことがなくなり、小さな傷の修復は容易になりました。

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ただ70年代までのバンパーは傷が付いて交換すると言っても、単なるメッキした鉄板ですので、たいした費用はかからなかったのですが、いまバンパーを交換しようものなら、フロント周り全部を総取っ替えして、さらに塗装代まで別途必要となりますから、交換した際のコストは飛躍的に上がりました。

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さらにバンパーのちょっとした傷の時に、削ってパテ盛って、うまく塗装してという専門職人さんが減ってきたため、ディーラでは安易に交換を勧めるようになり、ユーザーの負担あるいは保険で支払われる修理費用は一気に上がることになりました。自動車保険料が80年代以降に一気に上がってきたのは、実はこの豪華なバンパーの責任に負うところが大きいのです。


2.4WS(4 Wheel Steering)
1987年に発売されたホンダの3世代目プレリュードには当時流行の兆しがあった4WS(4輪操舵システム)が装備されました。4WSは狭い工事現場等で活躍する重機や大きな作業車、トラック、バスなどには普通に装着し活用されていたシステムですが、スポーティカーや量産乗用車に採用されるのは珍しいものでした。

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あのいつも画期的な製品や機能を素早く出してくるポルシェが散々実験をおこなっても「ダメ、4WSは実用化できない。ひっくり返る」とあきらめたものをホンダはわずか10数万円の追加オプションで成立させたことに世間はアッと驚きました。

このホンダの4WSは機械式で構造はいたってシンプル。私も運転したことはありますが、多少違和感を感じますが、高速運転で極めてスムーズな車線移動ができ(同位相※)、また狭い場所での取り回し(逆位相※)においても(後退する時は除き)優れたものでした。

 ※同位相:前輪と同じ方向へ後輪を動かす 逆位相:前輪とは逆方向へ動かす

4WSはホンダ以外の各メーカーからも様々な仕組みで続々と登場し、その後乗用車に一気に拡がるかと思っていましたが、今ではわずかに高級車のごく一部に補完的役割として残るだけで、それも積極的にアピールされることはなくなりました。

理由は4WSは前進している際はいいのですが、後退時にもの凄く違和感があります。中には後退時だけ電気的に4WSシステムをキャンセルできるものもありましたが、結局は構造や制御が複雑となり、コスト増や重量増につながり、また一般のユーザーにしてみると、運転に違和感を感じるような機能は求めていないということで、費用対効果から普及するまでには至りませんでした。

しかし高速走行中の安定性、狭い道や駐車場での取り回しや転回性能などメリットも多く、このまま消え去ってしまう技術としては個人的にはちょっと惜しい機能だと思っています。


3.フェンダーミラー/ドアミラー
元々1980年頃までは運輸省(当時)が定めていた規格では、乗用車にドアミラーを装着することは禁止されており、車両形式認定を受けることができませんでした。そのため海外から輸入した外国車もドアミラーをわざわざ取り去って、新たにフェンダーミラーを取り付けるなどアホなことをやっていた時期があります。フェラーリやポルシェのフェンダーミラー装着車なんてものが実際に走っていたのです(ほとんどのユーザーは車検の時以外はドアミラーに再び戻して乗っていましたが)。

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外国メーカー特にアメリカから、ドアミラーの禁止や100km/h走行時の速度警告ブザー設置など日本独自の規格は、輸入車排除につながり不公正だと圧力がかかり、外圧には弱い政府は1980年頃から輸入車については、しぶしぶドアミラーなどを認めることになり、さらに日本車の形式認定でも1980年代前半にドアミラーが解禁されました。

しかしドアミラー車が一気に増えていく中で、日本の特殊事情で困ったことが起きました。

それは日本の道路、車庫、駐車場などのスペースは、基本日本独自の規格である5ナンバー枠(車幅1700mm未満)で最適化されていましたので、ドアミラーを付けることによりそこから左右にそれぞれ10数センチ程度ボディーからはみ出してしまいます。

その点フェンダーミラーは車幅からわずかに外へ出ているだけで済んでいましたので、そのような問題は起きなかったのです。ドアミラー装着車が増えていくと、狭い自宅の車庫や街の立体駐車場に入らなかったり、狭い道で対向車とすれ違えないという事態が日本中で頻発することになります。

当初のドアミラーというのは、歩行者保護の観点からぶつかると後方に曲がる機能は持っていましたが、元々折りたたむという発想はなく(海外特に北米ではその必要はなく)、各メーカーともその欧米への輸出車用のドアミラーを装着したものが主流でした。

そこで日本の道路・駐車場事情を考慮して、世界初の電動折りたたみ式ドアミラーが1984年に上級車種の日産ローレルに初めて装備されました。

これは便利ということで、その後は一般大衆車まで一気に広まることになります。詳しくは知りませんが、国土が広く車幅を気にしなくていいアメリカや豪州はともかく、ヨーロッパではこの電動折りたたみ式ドアミラーは日本発の便利機能として拡がっているのではないかと思われます。

現在でもタクシーを中心にまだフェンダーミラー装着車が走っていますが、実際にフェンダーミラーのほうが斜め後方視界がよく、またドライバーの視線の移動が少なくて街中の運転では安全性は高いと言われています。

当初は新車を買う際にどちらでも選べるようオプション設定されていましたが、フェンダーミラーの美的センスが極めて悪く、車のデザイナーも付けたがりませんし、ユーザーも求めなくなり、現在では一部の業務用車種以外では、オプション設定もなくなりました。

ちなみに世界初と銘打ってフェンダーミラーにワイパーを付けたのは日産レパード(1980年〜)でしたが、作動するところを実際見たところ、オモチャのような小さなワイパーがドアミラーの半分程度の小さなフェンダーミラーの上をチャカチャカと動き、まるで漫画の世界でした。もっともその後当然のことながら普及することはありませんでした。

これらの他にも自動車はエンジン関連(エンジン本体、キャブレター、過給器など)やヘッドライト、タイヤ、シートベルト、過給器、サスペンション、ワイパーコントロールなど時代の要請や技術の進歩により進化を遂げてきました。

その中には、画期的と思われつつもすぐに消え去ったものや、地味なスタートながら長く支持されてきたものまで、数え切れないほどの独創的な技術や発想で作られたものがあります。消えていったものの多くは、排気ガス規制、燃費の向上、コスト圧縮が主因のようです。

また1995年にこれもアメリカからの強い要請により製造物責任法(PL法)が施行され、今までにない新機能を追加することで、想定できない事故や故障が起こるリスクがあり、メーカーはそれらを恐れて、独創的で実験的な新機能の投入はグッと減ることになります。

確かに効果や長期的な検証が完全に整わない新技術やエポックメーキングな製品導入に関して「ユーザーを実験台に使うなよ」という声が上がるのもわかりますが、一番乗りを目指して競い合い、互いに切磋琢磨があって初めて技術は進歩していくものです。

PL法はメーカーに対し「リスクを冒さず、新しいチャレンジはせず、保守的にこなれた技術の範囲で勝負をしなさい」「他社がやって大丈夫だったことを真似て、自社にはリスクがないように」と言っているようなもので、そうなるとどこのメーカーも技術の差はなくなり、コストの差しか考えなくなります。したがって2000年以降の新車は、どれも特徴は消え、どのメーカーも似たり寄ったりのものばかりで、面白みがなくなっていくことになりました。


【考察シリーズ】
バカバカしい軽自動車の馬力規制の考察(考察シリーズ30)
自動車の車幅に関する考察2(考察シリーズ29)
自動車の車幅に関する考察1(考察シリーズ28)
自動車盗難(2013)の考察(考察シリーズ27)
ラリーアートとSTIの明暗について(考察シリーズ26)
衝突防止装置の普及を加速するための考察(考察シリーズ25)
ランエボの維持費についての考察(考察シリーズ24)
もっと光をあてていい軽自動車の考察(考察シリーズ23)
高速走行中に集中豪雨に遭った時に関する考察(考察シリーズ22)
自動車部品の革新についての考察(考察シリーズ21)
ドアロックする?しない?についての考察(考察シリーズ20)
スバルアイサイト(EyeSightVer.2)の考察(考察シリーズ19)
自動車ワイパーの考察(考察シリーズ18)
冬場に常時エアコンを使う是非についての考察(考察シリーズ17)
雑誌の自動車評論、試乗レポートについての考察
ヘッドライトなど自動車部品の共用化についての考察(考察シリーズ15)
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新車購入の考察その2 購入は現金、マイカーローン、それとも残価設定ローン?
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