前スバル乗り、元・現三菱乗りとしてちょっと言いたいことがあります。
三菱のラリーアートは1984年三菱自動車の子会社と設立され各種モータースポーツへ参加したり、またユーザーへサポートをしてきました。中でも三菱ワークスチームとして出場してきたダカールラリーの活躍は目覚ましく、また結果こそかんばしくなかったもののWRC(世界ラリー選手権)での活躍は三菱自動車のユーザーやファンにとっては誇らしく喜ばしいことでした。


しかし2010年に突然の業務縮小、実際の活動休止が発表され、3月31日をもってほとんどが停止しました。これには三菱自動車のファンだけでなく、多くのモータースポーツファンをがっかりさせました。
それにいたる経緯はよくわかりませんが、考えられることは、2000年のリコール隠し発覚以降、2004年には闇改修をともなう二回目のリコール隠し発覚、元社長の逮捕、2009年頃から連続して起きたオイル漏れのリコールなど、経営にも影響が出る事態となりモータースポーツにお金を投じている場合ではないという社内事情があったのでしょう。そして最近また国交省の立ち入り調査があり、リコールに消極的という伝統がマスコミでささやかれています。
2002年に発覚したリコール隠しについては、それを下敷きにして書かれたという直木賞作家池井戸潤氏の「空飛ぶタイヤ」に詳しいですが、その内容はまったくひどいものです。
モータースポーツにはお金がかかるので撤退やむなしという一方では、時期尚早で売れもしない電気自動車(i-MiEV)の開発と販売に大金を投じ、アメリカで販売されているクルマの中で「2012年もっとも売れなかったアメリカ不人気車」として堂々第1位を獲得する始末です。
電池の高性能化、低価格化、充電スタンドなどのインフラも整わない中で、三菱グループや、グループと関係の深い企業の購入以外に買う人は少ないでしょう。
2012年4〜12月の平均でi-MiEVの月間販売台数はわずか500台程度です。三菱の軽乗用で一番売れているekで月平均2300台、人気のホンダNBOXだと月1.5万台と大きく桁が違います。
モータースポーツというのは、保守的で夢のない年寄りばかりで保身と金儲けだけに汲々している三菱の上層部(自動車だけでなく関係の深い銀行や商社、重工など含め)には理解できないでしょうが、会社の製品のイメージを高め、若者にクルマの良さや素晴らしさをアピールできる数少ない投資の場なのです。

そうした保守的な雰囲気がある三菱の中でも、社内に木全巖氏や篠塚健次郎氏、増岡浩氏、トミ・マキネン氏などエース達の影響が残っていた時代は、モータースポーツへチャレンジする活気あるスピリットが感じられましたが、いかんせんその後が続かず、その後は社内外にカリスマドライバーも育たず、モータースポーツ好きな若い人は他へ流出してしまいました。


そんなモータースポーツを自粛し、空気読めない、先も読めない指導者の下で作られるクルマに魅力を感じる人はいません。
タイで生産された軽よりも多少大きい貧乏人、いや、ケチンボ向け乗用車にときめきを感じる人はいないでしょうし、安いだけならなにも三菱のクルマでなくともいいわけです。
え?小型車のミラージュはユーザーをときめかせるような車格ではない?
そんなことはありません。三本和彦氏が現在乗っているフォルクスワーゲンポロやBMWのミニなど、新技術を盛り込んだときめかせてくれる小型車も世の中にはいくらでもあります。
もうひとつのSTI(SUBARU TECNICA INTERNATIONAL INC.)は、ラリーアートに遅れること4年、1988年に設立された富士重工業のモータースポーツに関わる事業をおこなっています。
立ち位置としては三菱のラリーアートやトヨタのTRD((Toyota Racing Development 1976年〜)、日産のNISMO(Nissan Motorsports International CO.LTD 1984年〜)などと同様ですが、スバルの会社の規模からすると、どこよりも活動が活発に見えます。
そしてこのSTIとラリーアートは、主として国内外のラリーにおいて、過去形なのが残念ですが、世界でもトップクラスのワークスチームを共に送り出してきました。
特に1992年には宿命のライバルと言われてきた記念すべき競技専用車とも言えるインプレッサWRX(初代)とランサーエボリューションが登場し、やがて主戦場をWRCとし、世界の強豪達とも肩を並べ激しいバトルを繰り広げてきました。
そしてそれは2005年の三菱ワークスチーム、2008年のスバルワークスチームそれぞれのWRC撤退まで続きました。

このような「インプレッサ対ランサーエボリューション」という国産2000ccターボの4WDセダンという同じカテゴリーで長く続いた好敵手の関係はもうなくなってしまうのでしょう。
浅田真央にキム・ヨナ、アイルトン・セナにアラン・プロスト、大鵬に柏戸、長島茂雄に王貞治、宮本武蔵に佐々木小次郎、星飛雄馬に花形満、矢吹ジョーに力石徹、岡ひろみに緑川蘭子、まともなライバルがいないのに強いのはONE PIECEのルフィーぐらいなものです。
互いに似たライバルがあってこそ切磋琢磨し強くなっていくのはスポーツにおいては必須のことです。
気のせいかも知れませんが、STIは三菱がラリー競技から撤退したあと、どうもライバル不在の国内外ラリーへの意欲が減退してしまったようです。そして今ではワークスチームとして活動の中心をNISMOやTRDがいるサーキット場へと移してしまいました。
世界的にはF-1と並び人気の高いWRCを頂点とするラリー競技において、ラリーアートあっての三菱、STIあってのスバルというイメージを持つ人達が世界中にいたことを三菱自動車関係者はもう一度思い返すべきではないでしょうか。
1964年にF-1に初参加し、1968年に一旦活動停止したホンダが、1983年にエンジンサプライヤーとしてF-1GPにカムバックするまで15年もの年月が必要でした(ホンダ単独チームとしての復帰までは34年)。
一度そのようなトップレベルの競争をやめてしまうと、はるか先へ行ってしまった技術やノウハウに追いつくには相当の年月が必要です。三菱のワークスチームがWRCの舞台で世界に伍して戦う姿がもう見られそうもないのは残念です。
【考察シリーズ】
自動車盗難(2013)の考察(考察シリーズ27)
高速走行中に集中豪雨に遭った時に関する考察(考察シリーズ22)
ETCカードの考察(考察シリーズ10)
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