2015年04月11日

バカバカしい軽自動車の馬力規制の考察(考察シリーズ30)



2014年度(2014年4月〜2015年3月)の車種別新車販売台数ランキングでは、1位こそトヨタの小型車アクアに奪われたものの2位以下の上位10台中7台を軽自動車で占めるに至りました。新車が売れると10台の内4台以上が軽自動車ということで、日本のベーシックカーとしてすっかり定着してきた感があります。

ただしこの4月からの軽の自動車税増税のための先食い(増税前の駆け込み需要)があったことや、エコカー減税の見直しと厳格化により小型車や普通車のハイブリッドカー、電気自動車、水素エネルギー車などへの恩恵がより高まることとなり、増税された今年度は軽自動車にとって厳しい年になりそうです。

その軽自動車ですが、エンジンには業界団体で自ら手足を縛る馬力規制(最高出力規制)というものがあります。

以前は普通自動車においても日本自動車工業会が主導して、事故を誘発しかねないパワー追求競争の警戒から、運輸省(現国土交通省)の顔色をうかがいつつ、長く馬力規制を敷いてきましたが、そうした規制がない輸入車と比べ、性能が劣っているかのように見える馬力規制は10年ほど前からうるさく言わなくなり、現在は規制はなくなっています。

しかし軽自動車は660ccという日本独自の規格ゆえに、国際競争という理由がなく、今でもしぶとく残っています。

軽自動車では1987年にスズキが出したアルトワークス(当時は550cc)が最大出力64馬力を出して、その後排気量が660ccまでと増えたにも関わらず、最高出力は28年前の64馬力のままで抑えられています

この28年間に様々な技術の進歩で安全装備がつき、また道交法改正などにより自動車事故の死亡率は下がってきて、軽自動車も安全になってきているのですが、頭の固い役人と、ガラパゴス的に進化し税制面などで優遇されてきた軽自動車規格の保護と維持を条件に、国に逆らうことができない業界団体という図式はずっと変わっていません。

現在、この規制いっぱいの馬力を出している軽自動車は、スズキやダイハツ、ホンダ、日産(三菱等のOEM)など各社から出ています。大きな荷物が積めるワゴン車も二人乗りのスポーツカーも最高馬力はすべて同じです。

じゃぁ二輪車はどうなっているかと言うと、こちらは国際競争力の必要性からか、2007年には馬力規制はすべて取っ払われています。

参考までに、軽自動車の排気量と近い600〜700ccの代表的な二輪のスポーツモデルとその最高出力を上げておきます。

SUZUKI GSX-R600
最高出力 125.8ps/13,500rpm
水冷DOHC4バルブ直列4気筒599cc
suzukigsxr600.jpg

ホンダ CBR600RR
最高出力 78ps/12000rpm
水冷DOHC4バルブ4気筒599cc

ヤマハ MT-07
最高出力 73ps/9,000rpm
水冷DOHC4バルブ直列2気筒689cc

などがあり、
外国の輸入車モデルにも、

トライアンフ デイトナ675 SE
最高出力 125ps/12600rpm
水冷並列3気筒DOHC12バルブ675cc

ドゥカティ モンスター696
最高出力 80ps/9000rpm
空冷L型2気筒 2バルブデスモドロミック696cc

など、同程度の排気量ながら、軽自動車の最高馬力を軽く超えている二輪車は珍しくはありません。しかも現在の軽自動車で馬力規制いっぱいの64馬力を出しているのは、すべてターボチャージャー付きエンジンですが、二輪車の場合はすべてNAエンジンでこれを超えているのです。

理屈や原理から言っても、600ccのNAエンジンで80馬力出せる力があるのなら、それにターボを付ければ100馬力超えもそう難しいことではありません。すでにスズキの軽自動車のターボエンジンを載せているケータハムセブンは80馬力を出しています

seven160.jpg

もちろん2輪と4輪ではトルク特性(4輪のほうが重いので運転しやすさからトルクを高める必要性がある)や、日常での扱いやすさなどでエンジン特性の違いがあり、ピークパワーだけを追い求めていいわけではありませんが、少なくとも28年前の馬力規制が技術的には過去の遺物と化していることは明らかでしょう。

ホンダの2シーターミドシップS660が登場する前には「いよいよ軽の馬力規制が外される」と期待を込めて言われていましたが、結局は規制内に収まり、ホンダの最近のポリシィ「枠にはまるな。」ではなく「枠に収まれ。」だったのはご存じの通りです。

hondawaku.jpg


なぜ軽自動車の馬力規制が解除されないのか?自分なりに考えてみました。

(1)軽自動車に力を入れていないトヨタや日産など大手自動車メーカーや天下り業界団体への遠慮
(2)海外自動車メーカーから日本独自規格の軽自動車優遇へのバッシング回避
(3)軽自動車メーカーの横並び意識と、護送船団方式への役人達の自負と利権確保

でしょうか。

(1)は軽自動車のエンジンパワーが上がると、現在の1000ccクラスの小型車の馬力と肩を並べてしまい、税制面では不利な小型車を大量に製造して売っているトヨタや日産にダメージを与えかねません。そうした大メーカー様に遠慮して軽自動車は窮屈な枠の中に収めておこうという考え方です。また自動車メーカーの業界団体であり官僚天下りの温床一般社団法人日本自動車工業界に対する遠慮ということもあるかも知れません。

(2)は日本独自の軽自動車規格に合わせてくる海外自動車メーカーはほとんど皆無で、軽自動車と同じぐらいの大きさや排気量でも日本の区分けでは小型車または普通車に入ってしまいます。外国メーカーは軽自動車の税制優遇は外国車を排除につながり反対していますので、これ以上軽自動車の性能が上がりシェアが増大すると、外国との貿易摩擦や軋轢が起き、外圧が高まるのを恐れているのかも。

(3)は、日本の自動車業界を世界でもトップクラスにしたのは自分たちだという妙な自負と自信を持ち続けている官僚が多く、自分たちの作った規格や規制こそ日本の工業を守るために重要という伝統が今も生き続けています。銀行や保険会社を当時の大蔵省が、自動車産業を通産省(当時)と国交省が、電話会社や放送局を総務省が、農協を農林水産省が、保護育成の名の下に牛耳ってきました。なので技術的にはとっくに可能なのに、親方日の丸に逆らって勝手に自主規制破りなどすればその仕返しは相当厳しいものとなる恐れがあり、どこも逆らえません。そして規制をおこなっている業界団体にはしっかりお目付役の官僚がいっぱい天下ってきています。

もっと複雑な問題が絡んでいるかもしれませんが、そろそろ軽自動車の無意味な馬力規制なんか取っ払って、世界に冠たる高性能スモール(軽自動車)を国内だけに留めず、国を挙げて海外、特に軽自動車が似合いそうなアジアやアフリカの各国へ輸出、現地組み立てしていく方針へと変えていくべきだと思っていますがどうでしょう。

【考察シリーズ】
バカバカしい軽自動車の馬力規制の考察(考察シリーズ30)
自動車の車幅に関する考察2(考察シリーズ29)
自動車の車幅に関する考察1(考察シリーズ28)
自動車盗難(2013)の考察(考察シリーズ27)
ラリーアートとSTIの明暗について(考察シリーズ26)
衝突防止装置の普及を加速するための考察(考察シリーズ25)
ランエボの維持費についての考察(考察シリーズ24)
もっと光をあてていい軽自動車の考察(考察シリーズ23)
高速走行中に集中豪雨に遭った時に関する考察(考察シリーズ22)
自動車部品の革新についての考察(考察シリーズ21)
ドアロックする?しない?についての考察(考察シリーズ20)
スバルアイサイト(EyeSightVer.2)の考察(考察シリーズ19)
自動車ワイパーの考察(考察シリーズ18)
冬場に常時エアコンを使う是非についての考察(考察シリーズ17)
雑誌の自動車評論、試乗レポートについての考察
ヘッドライトなど自動車部品の共用化についての考察(考察シリーズ15)
連鎖するトヨタ車の不具合報道についての噂と考察(考察シリーズ14)
新車購入の考察その2 購入は現金、マイカーローン、それとも残価設定ローン?
新車購入の考察その1 ディーラーか業販店かそれともネット通販か?
車の大規模オフラインミーティングについての考察
ETCカードの考察(考察シリーズ10)
自動車5ナンバーの栄光と挫折の考察
安全!快適!ドライブのための考察
高速道路の無料化メリット・デメリットについての考察(その7)
エコカーの定義についての考察(考察シリーズ6)
ランエボと自動車保険(特に車両保険)についての考察
カーナビについての(自己流)考察(考察シリーズその4)
ETCについての考察(考察シリーズ2)
ランエボ]に付けたオートクルーズコントロール(以下クルコン)についての考察

【お出掛けレポート】
成田へドライブ(1)
東北激走ツアー2018 その1(山形、秋田、青森、岩手 2018年7月)
由比のさった峠と富士川ドライブ2018
金運神社〜笛吹桃源郷
浜石岳から由比へ2016
東北ツアー2015(青森、岩手)その1
関ヶ原と京都旅その1
日光東照宮〜いろは坂〜わたらせ渓谷弾丸ツアーPart1
お伊勢参りとルーブル彫刻美術館ツアー(その1)



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